この問題は、密閉空間において温度と体積と圧力が変化した場合において、温度を求める問題である。このうち、体積と圧力に関してはある程度の情報があるので、アボガドロの法則(密閉空間において、PV∝T)から算出できる可能性が高い。  さらに、温度変化前のTの絶対量が既知であり、温度変化前後でのPの変化倍率が既知であることから、温度変化前後でのVの変化倍率さえ分かれば、  加熱後のT = 加熱前のT×(Pの変化倍率×Vの変化倍率)  として算出できそうである。ゆえに、温度変化前後におけるVの変化倍率さえ求まれば、温度変化後のTの絶対量を求めることができる。  では、Vの変化倍率を求めることを考える。Vは容器の底面積とピストンの高さの積によって決定するが、底面積は変化しないため、ピストンの高さに比例すると考えてよい。ピストンには鉛直方向にばねが接続されており、ばねの伸びをx[m]とすれば、  F=4000x[N]  なる力が働く。この式より、「ばね(ピストン)が静止しているとき、ばねの伸びxはばねが元に戻ろうとする力Fから一意に算出できる」ということが言える。ここで、ばねがある程度伸びたまま元に戻らず静止している場合、ばねが元に戻ろうとしている力があるにもかかわらずばねが動かないということであるから、ばねが元に戻ろうとする力と逆の外力が働いているはずである。この問題において外力で考えられるのは、次の3つである。 (上方向の外力)容器内の空気から受ける気圧 (下方向の外力)容器外の空気から受ける大気圧 (下方向の外力)ピストン自体の重さから生じる重力  温度変化前では、問題文より、容器内の空気による圧力と大気圧が一致しているため、ピストンにかかる重力とばねが元にもどろうとする力が釣り合っているはずである。ピストンにかかる重力は60Nであるから、これをF=4000x[N]に代入すれば、  x = 60 / 4000 = 0.015[m]  となる。すなわち、温度変化前ではばねの伸びは0.015[m]であり、重力の方向から考えれば、容積を少なくする方向にばねの長さが変化していたことになる。  続いて、温度変化後では、問題文よりばねの伸びは0[m]であるから、温度変化前より密閉空間の高さは0.015[m]高くなったことになる。そして、温度変化前の密閉空間の高さは0.2[m]、温度変化後の高さは0.215[m]、底面積に変化がないことから、温度変化前後におけるVの変化倍率は、  Vの変化倍率 = 0.215 / 0.2 = 1.075 となる。ゆえに、加熱後の絶対温度Tは、  加熱後の絶対温度T = 300 * (1.2 * 1.075) = 300 * (1.2 + 0.09) = 300 * 1.29 = 387[K] 以上より、題意のおおよその温度としては3番の390[K]が最も近い。